第7話 「 」
ヴァイオレット・エヴァーガーデン
「なんというか、本当の話ではないのに、自分が体験しているようです。自分がこのオリーブという少女と同じように、喜んだり、悲しんだり、不安になったりするのは、どうしてなのでしょうか?」
「私にはそれをくみ取る能力がなく、本当に申し訳ございません」
「大切な人と別れるということは、二度と会えないということは、こんなにも寂しく、こんなにもつらいことなのですね」
「いいのですか? 武器として人をあやめてきた私が、それでいいのですか?私は誰かの『いつか、きっと』を奪ったのではないのですか?そして、その人たちにも、愛する相手がいたのではないですか? ……燃えています……燃えています!自分がしてきたことで、どんどん体に火がついて、燃え上がっています!」
「少佐はきっと、ご無事です。……ご無事です!……分かりません、分かりません。どうして、どうして私だけ、おかしいです!そばには少佐がいらしていたのに、そして、私に……」
オスカー・ウェブスター
「それは、君が主人公と、オリーブと同じ気持ちになってくれてるってことだよ。オリーブに共感してくれてるんだ。君がそう感じてくれて、ホッとした」
「完成させるよ、オリーブの物語を。少女は帰ってきて父親と再会する。どんなにつらい冒険をしたとしても、最後はハッピーエンドだ。主人公も観客も幸せになる、いや、してみせる」
「あと何千回だって、そう呼ばれたかった。死なないでほしかったな。生きて、大きく育って、……ほしかったな」
「奇跡をかなえてくれた彼女に俺は言った『神様なんていないと思っていたけど、いるなら君のことだろう』と」
「君は死んだ娘の『いつか、きっと』をかなえてくれた」
クラウディア・ホッジンズ
「すまない。どうしても、君に言えなかった」
第8話 (※なし)
ヴァイオレット・エヴァーガーデン
「ウソです!ウソです! 少佐はご無事です!」
「少佐の瞳があります。少佐の瞳と同じ色です。これを見たときの、こういうのを、何と言うのでしょう?」
「『美しい』は知りませんでした。『キレイ』と似ている言葉ですか?」
「いいえ、これが一番『美しい』でした。言葉が分からなかったので、言ったことはありませんが、少佐の瞳は出会った時から美しいです」
「もう少佐に命令は頂けないのでしょうか?」
ギルベルト・ブーゲンビリア
「ヴァイオレット、ヴァイオレットだ。君は道具ではなく、その名が似合う人になるんだ」
「命令じゃない。私が君に感謝したいんだ」
ディートフリート・ブーゲンビリア
「何だ?その顔は。 あいつにとって、ただの道具だった貴様が、感情のないただの道具の貴様が、悲しいはずはないだろ」
クラウディア・ホッジンズ
「俺さ、この戦争が終わったら軍を辞めて、会社を興そうかと思ってるんだわ。そしたら、お前も雇ってやるよ」
「じゃあ、ヴァイオレットちゃんを雇うことにするか」
第9話 「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」
ヴァイオレット・エヴァーガーデン
「できません!少佐を連れて逃げます!」
「逃げません!少佐が残るのならば、ここで戦います!逃げるというなら、少佐を連れて逃げます!」
「絶対!絶対、少佐を死なせません!」
「『愛』? 愛って何ですか?『愛』って、何ですか?分かり、ません。私、分かりません!少佐」
「どこに行くのですか?私は少佐のいらっしゃる所にしか行けません」
「私は、ホッジンズ社長がおっしゃった通り、燃えているのです。自分がしてきたことで」
「少佐、少佐……私はどうしたら、命令を、命令をください」
「同僚が知らせてくれたのです、手紙で。それは私が生まれて初めてもらった手紙です。手紙をもらうというのは、とてもうれしいことなのだと分かりました」
「『その名にふさわしい、その名が似合う』」
「社長のおっしゃるとおり、私はたくさんのヤケドをしていました。いいのでしょうか?私は自動手記人形でいていいのでしょうか?生きて、生きていていいのでしょうか?」
ギルベルト・ブーゲンビリア
「逃げろ、私を置いて逃げろ」
「やめろ。もうやめてくれ!!」
「生きるんだ、……ヴァイオレット。君は生きて、自由になりなさい。心から、……愛してる」
「もし、私に何かあったらヴァイオレットを頼む。戦争が終結したら、ライデンのエヴァーガーデン家まで、あの子を送り届けてやってくれ。……頼むよ」
クラウディア・ホッジンズ
「言えなかったんだよ。君は自分のことよりあいつの身ばかりを案じていて」
「会社に戻るんだよ。君はうちの手動手記人形だろ。じゃあ、俺もここにいる。君が一緒に戻ってくれるまで。俺はあいつに君を託されたんだからな。決戦開始の直前、あいつは俺のところへ来て言ったんだ」
「あいつは、決して君を戦う道具とは思っていなかった。一人の女の子としての君の将来を案じていたんだ」
「退院したばかりの頃は、どうなるかと思ったけど、君はちゃんとドールの仕事をこなせるようになった。本当に頑張ったよね。あいつの命令がなくても生きていけるはずだ」
「いつか俺が言ったことが分かる時が来る。そして初めて、自分がたくさんヤケドしていることに気づくんだ」
「境遇がどうであれ、経緯や理由が何であれ、してきたことは消せない」
「忘れることもできないだろ。……燃えているのはあの子だけじゃない。俺や君だって、表面上は消えたように見えるヤケドの痕も、ずっと残ってる」
「どうするかは自分で決めるしかない。燃え上がった体と向き合って、受け入れたあと」
「大丈夫、なくしてないよ。何も」
「してきたことは消せない。……でも。ーーーーでも、君が自動手記人形としてやってきたことも、消えないんだよ。ヴァイオレット・エヴァーガーデン」
カトレア・ボードレール
「明日は顔出せそう?みんな待ってるし、あなたへの依頼もたくさん来てるのよ」
ローランド
「どれ1つ取ったって、誰かの大切な思いだからな。届かなくていい手紙なんてないんだ」
「よかった、みんなちゃんと届いたんだな」
スペンサー・モールバラ
「妹に手紙を書くなんて、何かテレくさいが、でもあいつのおかげで仕事も決まった。もう一度、やり直す気持ちになれたんだ」
第10話 「愛する人は ずっと見守っている」
ヴァイオレット・エヴァーガーデン
「夜更かしは女性にとって大敵です。カトレアさんがそう言っておられました。……当社の別のドールです」
「お嬢様の時間を私が消費していることには意味があります。どうかお母様に対してお怒りならないでください」
「お嬢様がおつらいのは当たり前です、その小さな体で、すでにお母様のご病気を受け止めていらっしゃる、あなたはとても立派です」
「誰にもどうにもならないことなのです。私の腕があなたの腕のように、柔らかい肌にはならないのと同じくらい。どうしようもないことなのです」
「人には届けたい思いがあるのです」
「届かなくていい手紙なんてないのですよ、お嬢様」
「今後50年にわたって、アン・マグノリアに届ける手紙です」
「届く頃には、お母様は。まだあんなに小さい、寂しがり屋で、お母様が大好きなお嬢様を残して、あのお屋敷に一人残されて、私……私、お屋敷ではずっと泣くのを我慢していました」
アン・マグノリア
「お人形が歩いてきたの。すごく大きなお人形が。何だかそれは、よくないもののような気がしたの」
「お客様は嫌い。私からお母さんを奪うんだもの」
「本当はヴァイオレットにリボンをつけてほしいんじゃないの。……本当はお母さんにしてほしいの。一緒にご本読むのも、なぞなぞも、おままごとも、虫はお母さん苦手だけど、お母さんと私の時間を取らないで、ヴァイオレット!」
「お母さんはウソばっかり。……だってお母さん、ちっともよくならないじゃない。すぐに元気になるって言ったくせに!」
「私、知ってる!お母さんは、お母さんがいなくなったら私1人よ!私はいつまでお母さんと一緒にいられるの?これからずっと一人になるなら、手紙なんて書かないで、今、私と一緒にいて。私といてよ、お母さん!」
「そんなの、届かなくていい!」
「それはお人形じゃなかったの。それからよくないものでもなかったわ。とっても優しくて、私、あの人が書いた手紙読んでみたかったな。一体誰への手紙だったんだろう?」
代筆(ヴァイオレット)
「アン8歳の誕生日おめでとう。悲しいことがたくさんあるかもしれない。頑張ることが多くてくじけているかも、でも負けないで。寂しくて泣いてしまうことも、あるかもしれないけど忘れないで。お母さんはいつもアンのこと愛してるわ」
「アン10歳の誕生日おめでとう。背も伸びて、すいぶん大きくなったんでしょうね。でもまだ本を読むのと、踊ることは好きでしょ?なぞなぞと虫取りは卒業したかしら?」
「18歳の誕生日、おめでとう。もう立派なレディーね。好きな人ができたかしら?恋の相談には乗れないけど、あなたが選ぶ人ならきっと、とてもステキな人よ」
「誕生日おめでとう、アン。20年も生きたのね、すごいわ。大人になっても、たまには弱音を吐いてもいいのよ。あなたが不安になっても、私がいるわ、アン。ずっとずっと、見守ってるわ」
第11話 「もう、誰も死なせたくない」
ヴァイオレット・エヴァーガーデン
「けれど、そんな所だからこそ兵士には誰かに伝えたい思いがあるのではないでしょうか?」
「お待たせしました、旦那様」
「あなたの言葉を私の指で覚えております」
「私はこのまなのほうがいいと思います」
「旦那様のその思いを、私が手紙にします」
「ここにいます、おそばにおります」
「もう大丈夫ですよ、旦那様。手紙は必ずお届けいたします」
「いいえ、いいえ、いいえ……いいえ。守ってあげられなくて、ごめんなさい。死なせてしまってごめんなさい、…………ごめんなさい」
エイダン・フィールド
「イヤだ、イヤだ、死にたくない、俺は帰るんだ!マリア! …………帰るんだ」
「手紙書きたいんだ、もうすぐ死にそうだから。……頼むよ」
「父さん、母さん。俺のこと今まで育ててくれてありがとう。これが最後の手紙になるかも。もし2人がまた生まれ変わって、夫婦になるならまた俺を産んでほしい、お願いだよ。こんなふうに終わるはずじゃなかったんだ。もっと幸せになって、その姿を2人に見せるはず……だったんだよ。だから父さんと母さんも、祈って、また俺を息子にしてよ、お願いだよ」
「君にそう言ってもらえると、なんだかそんな気になる」
「元気にしてるかい?覚えているかな?俺に告白してくれたときのこと、俺はすごく、すごく、すごく、うれしくて、マリア、マリア。帰りたい、君の所に。死にたくないよ。帰りたい、君の所に、待ってて」
「ヴァイオレット、俺の手紙。お願い、助けてくれてありがとう。俺、1人じゃないよ」
「ありがとう」
エイダンの母
「ありがとう。……息子を返してくれてありがとう」
第12話 (※なし)
ヴァイオレット・エヴァーガーデン
「違います。私はもう……」
「誰も殺しません。武器はいりません」
「現実では終わっています」
「もう、誰も殺したくはありません」
「もう誰も殺したくはないのです。少佐の命令は『生きろ』であって『殺せ』ではありません!」
「少佐はそれでも『生きろ』とおっしゃったのです。守りたかった!私も守りたかったんです!」
ディートフリート・ブーゲンビリア
「貴様は今も、命令が欲しいだけの道具なんだな」
「道具じゃないなら、何だというんだ?」
「自分すら守れないくせに、不殺とはおこがましい!俺の弟、ギルは、そんなヤツを守ろうとしたのか?!」
「戦わない殺せない戦闘人形など、ただの足手まといでしかない!だから、ギルベルトも守れなかったんだ。おまえがギルを殺したんだ!だからおまえも死んでしまえ!早く死ね!」
カトレア・ボードレール
「ヴァイオレットは、ステキな手紙を書くんです。スッと人の心に滑り込んで、自分が素直になれる手紙」
ベネディクト・ブルー
「確かにあいつは出来損ないかもしれねえけど、それでも必死にやってる。あいつが書いた手紙で救われてる人もいる」
第13話 自動手記人形と「愛してる」
ヴァイオレット・エヴァーガーデン
「ありがとうございます」
「終わったのに……」
「私はまだ自分の手紙を書いたことがありません」
「命令は私のすべてです」
「わかりません。……ウソではありません。自分でも分からないのです。私は少佐の命令を聞いていたいのです。少佐の命令があれば、どこにでも行けるのです、それだけなのです」
「心はあるのです。あったのです、あのときも。ですが、分からないのです」
「言葉が分からなかったので、言ったことはありませんが、少佐の瞳は出会ったときから美しいです」
「美しいです」
「もう、命令はいりません」
「いえ。でもたくさん手紙を書きました。初めて自分の手紙も」
「たくさんの人の思いが、空から降ってきます」
「お初にお目にかかります。お客様がお望みならどこでも駆けつけます。自動手記人形サービス、ヴァイオレット・エヴァーガーデンです」
ギルベルト・ブーゲンビリア
「私の命令は、この戦い以降聞かなくていい。いや、誰の命令も聞かなくていい。自由に生きなさい」
「どうして命令だと思うんだ?私は本当に道具だと思っていると?そうなのであれば、幼い君を抱いて帰りはしなかった。君をずっと私だけのそばに置かなかった。分かっているはずだ、怒っているのも、つらいのも、君を!」
「君には感情がある。私と同じ心があるだろ!ないというのなら、ないというのならその顔は何だ?そんな顔ができるんじゃないか!今、私のことが怖いだろ?急にどなられてイヤだろ?理不尽に言われて腹が立つだろ? ウソだ!」
「すまなかった。でも私は君が『自分は道具であれ』と戒めるのを見ているのがつらい。小さかった君を、そんなふうにしてしまったのは、私なのに、なのに……君はまだ私のことを信じて」
ディートフリート・ブーゲンビリア
「俺が捨てた道具は、ギルベルトの犬になった。だが両腕を失い、あるじを失い、何もかもなくしたその果てに、なぜかそこに立っていた」
「ヴァイオレット。あいつの分もおまえは生きろ。生きて、生きて生きて、そして死ね。これが俺からの最後の命令だ」
「俺が捨てた道具を、ギルベルトは道具として扱わなかった。だからそれは両腕を失い、あるじを失っても、あいつからもらった大切なものを、決してなくすことはないだろう」
カトレア・ボードレール
「じゃあ記念すべき初めての手紙ね。今のあなたが思うとおりに書けばいいのよ。心のままにね」
「『パパは君が生まれるのを待ってるよ。そして祈ってる。君がすくすく育つことを、幸せになることを。誰かを愛し、愛されることを。そして、君や君の子供たちの生きる未来が、争いのない幸せであふれた世界でありますようにと』
ブーゲンビリア夫人
「あなたのせいではないわ。……あなたが背負わなくていいのよ」
「あの子は生きてる、心の中で。だから決して忘れない。思い出すたびにつらくても、ずっと思って生きていくわ。だって今も、愛しているんだもの」
手紙(ヴァイオレット)
「親愛なるギルベルト少佐。お元気ですか?お変わりないですか?今、どこにいらっしゃいますか?困ったことはありませんか?春も、夏も、秋も、冬も、いくつも季節が過ぎましたが、少佐のいらっしゃる季節だけが巡ってきません。私、最初は分かりませんでした、少佐のお気持ちが何1つ分かりませんでした。でも、少佐に頂いたこの新しい人生の中で、少しだけですが感じることができるようになったのです。代筆を通して、出会った方たちを通して、私は信じています。少佐がどこかで生きていらっしゃることを。だから私も生きて、生きて、生きて、その先に何があるか分からなくても、ただ生きて、そしてまた会えたらこう伝えたいのです。私は今、愛してるも……少しは分かるのです」
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