| 1期、劇場版、閑話 | 2期 |
第1話 サラマンダー戦闘団
ターニャ・フォン・デグレチャフ
「ようこそ、我が戦闘団へ。これまで共に遊んできた素晴らしき戦友諸君、新たな仲間が戦列に加わることをここに祝おう。そして、新任諸君、歓迎しよう、盛大に。私の、我々の戦場へようこそ。この世界は理不尽で、戦場とは不条理の連続だ。とどのつまり、諸君、諸君は今や、抗うか、死ぬかを自由に選べるのである!ようこそ、前線へ!戦争の時間だ!」
「歩兵部隊は、そこぬけのアホ揃い。そんなところにこもり続けて何の意味がある」
「機甲部隊は、待てのできん駄犬か。今やるべきは攻撃ではなく、友軍の収容であろう」
「砲兵部隊は、バカの寄せ集めだ。その拠点が大量の砲弾を使うのに値するのか、考えもしないのか」
「おまけに新任の魔道士たちは弾避けにも使えん……ああ、無能な働き者ばかり。なぜ、私が戦闘団を!!ああ、やってられん!!」
「さすがはコミーか。弾薬も兵士も無駄遣いがお好きなようだ」
「今は私が戦っているだろう!連携というものを知らんのか!」
「コミーまで神にすがるとは、不条理な存在を好む連中にはうんざりだ。主よ、秤と秩序を善とされたまえ 平穏と約束の王国があらん事を。おお、それは導く者、苦難の道のりとて、丘の上にたどり着かん、そは約束された得た誉の家、安寧にして、正常な世界、地上に、世界に、福音あれかし」
「諸君らが教え込まれた弾性防御理論は、適切な定員、適切な装備、適切な補給あればこそだ。ここ東部では、その環境が用意され得ない。なのに諸君らときたら現実を頑なに認めようとしない。まったく、頑迷で無能な働き者ほどの害悪はあるまいよ」
「雪はどこまでも美しく、あまりにも無慈悲だ。かつての世界における大戦を例にひくまでもない。冬は兵士の体力を奪い、精神を削ぎ、その足を凍てつかせる。やがて雪解けはで泥濘となり、我々の足をすくう。機動力を誇る帝国軍にとって最悪の戦場だ……これでは勝ちきれん」
「諸君!事態は単純だ。我々は敵の大軍に包囲されようとしている。敵を受け止め、息切れしたところを見計らい、逆襲するしかない、防衛戦だ!持ち場の手綱はしっかりと握れ!」
「各隊警戒を続行。命令があるまで、現状を維持せよ。敵につられるなよ、根競べだ!」
「連邦の旅団も練度不足だったわけか。諸君、期待外れの根競べだったな。各隊、存分に力を見せつけたまえ!」
「(あの程度の勲功で評価を改めるとでも。幸か不幸か、私は軍隊の高級将校だ。この戦争に勝ちさえすれば、評価は無条件で上がる。だが、勝ちきれないとなると、責任を問われる立場に早変わりだ。上官命令抗弁がどこまで適応されるか分からない以上、多方面からの証言が私の行く末を左右する。ゆえに、今後は部下からの評価を、イメージを大切にせねばならん)」
メアリー・スー
「行き過ぎた行動は反省しています。……でも、これも神のご意思。絶対に打ち倒さねばならないのです、あの、悪魔だけは」
ロリヤ
「まったく、いけない子だ。たぎって、たぎって、どうしようもない……私の妖精さぁん」
第2話 奇妙な友情
ターニャ・フォン・デグレチャフ
「さすがはコミーだな。連中の掲げる崇高な思想とやらは、連邦全土に染み渡っているようだ」
「(それが前世からの信条だ)」
「『誰が祖国を想わざるものか』そう言ったな……くそったれ、道理で戦意が高すぎるわけだ。……分からんのか!コミニストと戦うつもりで、ナショナリストと戦争を続けているんだぞ!(今のやり方では、敵に塩を送っていたも同然だ)」
「端的に申し上げます、閣下。我々は殺し過ぎました」
「ですが、敵を銃弾ではなく言葉で減らせるのなら、言葉のほうが安上がりです」
「ではこの際です。イデオロギー攻撃などゴミ箱にお捨てください。……理屈ではありません、閣下。重要なのは大衆の感情なのです。宣撫工作というものは、我々に対する敵意を削ぐのではなく、分断するものでなければなりません。彼らは党への忠誠心からではなく、祖国を想う気持ちから銃をとっているのです」
「敵の精神的支柱はイデオロギーではなく、ナショナリズム。そうである以上、我々は共産主義者とそれ以外を分けるしかありません」
「いえ、統治に手を出せば軍事機構は疲弊して崩壊しかねません。我々に必要なのは、業務を委託できる素晴らしき友人です」
「しかし、外交の格言にはあるはずです『敵の敵は友』だと」
「(まさに善良な個人にして、邪悪な組織人というわけか)」
「(まったく、詐欺師もいいところだな、きっと地獄には閣下の特等席が用意されているに違いない)」
「(思えば、今回の一件も優秀な副官のおかげだ。ライン戦線以来の付き合いになるが、もはや友人と呼ぶのもおこがましい、彼女の他に付き合いの長い存在といえば)…………ふざけるな、誰が貴様などと、中尉!あの忌々しい人形はなんだ!」
ヴィクトーリヤ・イヴァーノヴナ・セレブリャコーフ
「厳密に申し上げるなら、上層部に対する不支持の表明です。最終報告書からは、そうした生の声が抜けているようでして……」
「では、悪魔のように黒く、地獄のように熱く、天使のように純粋で愛のように甘いコーヒーを用意しますね~」
マテウス・ヨハン・ヴァイス
「どれも似たようなものですね、まさに共産主義シンパの定型文といったところです」
「中佐殿は、ほんとうに共産主義者がお嫌いですよね」
ハンス・フォン・ゼートゥーア
「興味深い言葉だな。この歳になると、新しい友人を作るのも簡単ではなかろう」
「親愛なる聴衆の皆さま。我々帝国が望むものは明確です!平和!私もあなた方と同じように、ただ祖国に平和があらんことを望む一人です。平和、平和、平和、悪魔のような赤匪さえいなければ我々は!あなた方は!武器を取ったでありましょうか、我々は祖国を守るべくして剣をとったに過ぎません。平和を回復したあかつきには、武器を下ろし、愛すべき故郷に戻ることを約束します!我々には占領地域を併合する意図はありません。領土と主権を持つ自立した人々との共存を心より切望するばかりです。誰が祖国を想わざるものでしょうか!誰が故郷を想わざるものでしょうか!どうかお願いです、どうか、良き友人として、橋の上のホラティウスが如く、あなた方と共に歩むことを許して頂きたい!」
「小官は今日、この時をもって帝国軍を代表し、軍政区域の民政移管を宣言致します!……願わくはライヒとその良き友人たちの未来に、光あらんことを」
ロリヤ
「義勇軍部隊への派兵など、渡りに舟だろう。連合王国を敵にまわすより、味方として活用したいではないか。これからはイメージ戦略も必要となる。幸いなことに我々は、帝国という世界の敵と戦争をしている、我が連邦の善良性を広く示す必要があろう」
「だってそうだろう。例の部隊は、あの妖精さんを目撃したそうじゃないか。すぐに捕まえてあげるからね」
「同士書記長。問題が発生いたしました、帝国は手を組みました、連中は民族主義者と握手を交わしました。帝国軍の占領地域に、臨時政府の樹立と民政移管の手続きを始めています。……世界の敵に、あの帝国に、友人ができたのです!」
第3話 善意の仲介人
ターニャ・フォン・デグレチャ
「(優位に立ったかと思えば、すぐに劣勢。もはや悠長に保身を考えている場合でもないか。この戦争を終わらせるための落としどころはいかに……)」
「つまり、私は実現しないレルゲン戦闘団の次席指揮官であり、現サラマンダー戦闘団の指揮官に留まると」
「(名目上の責任者が用意され、人事の連中に恩が売れる?最高じゃないか……とはいえ)小官は国家の僕となることを誓った軍人です。含むところが一切なしとは申せませんが、それなり以上のご配慮を頂けるのであれば幸いです」
「陸戦条約は相互主義です。交戦国がことごとく本条約の当事者である時に限り、締結国間にのみこれを適応する。官権の限り、連邦は陸戦条約に調印しておりません」
「宗教施設であると示す特殊標章がないことは確認済みです。……我々は慣習法や規範をも尊重します。ですが、標章がないのは事実です」
「ご協力、ありがとうございました」
「(そうか、イルドアは講和の仲介を。探し求めていた出口を用意してくれるわけか。……つまり、泥沼から抜け出すため妥協できるかと?できるに決まっている!損切り!損切りあるのみ!)」
「条件?ございませんが。小官は軍人であり、合法的な命令に服する義務を誓いました。戦争の落としどころを上が決めるのであれば、従う以上の条件などあるはずもありません。合法的な命令の義務は、全てに優越します、軍人とはそうあるものです」
「驚いたな、貴官ですらそうなのか」
「割り切るしかないからだ。前線指揮官の本領は、選択と集中にある、必要とあらば損切りとて可能だろう!」
「(まずいな、信頼できる同期や部下までもがコンコルド効果に陥っているとは。これは参謀本部や最高統帥府が現場の説得でのたうちまわるぞ。最悪は力で鎮圧か?味方殺しは今後のキャリアにはよくないのだがな)」
マテウス・ヨハン・ヴァイス
「結論から申し上げますと、犠牲に見合う成果と犠牲をこれ以上出さない未来であれば、後者を希望します。ですが、割り切れません。ここまで血を流した挙句、何の成果も得られないのはさすがに……」
「むしろ中佐殿はなぜ割り切れるのですか?!」
「失礼ですがそれは理屈です。それは理屈なのです!」
エーリッヒ・フォン・レルゲン
「(なるほど。いきなりの動員演習の裏には、そのような魂胆が)」
「つまり、名目上は貴官の軍功を奪うことになる、どうか勘定してもらいたい」
「安心したよ。撃たれるかと覚悟していた」
「『クソくらえ』以上です。……わが軍は、断固たる意志に基づき、……鉄槌作戦を発動致します」
マクシミリアン・ヨハン・フォン・ウーガ
「いくら戦費を費やし、いくら死体を積み上げたと思っている」
ハンス・フォン・ゼートゥーア
「同感だが、イルドアは麗しき同盟国。捨ておくほうが安上がりというもの」
「(どうにか落としどころは探したい、いや探さねばならん)」
クルト・フォン・ルーデルドルフ
「同盟国ならば、観戦武官ぐらいは許されるだろう。作戦からはレルゲンを出す。やつならば見るべきものを見てくるだろうよ」
「南方のヒルめ。まさか中立面で仲介とは」
「錆びついたな。……貴様も錆びついたと言ったのだ、ゼートゥア。すでに最高統帥府にも話を通した」
「運命は己の拳で掴む!誰かの手に委ねなぞせん!」
ヴィルジニオ・カランドロ
「イルドア王国は、善意の仲介人として平和という商品のご用意があります」
「私たちは友人たちの間をとりもつことを惜しみません。まことに僭越ながら、落としどころを探す探す時期ではありませんか?」
「ええ、野戦連れした指揮官すらわきまえています。恐ろしいまでに、義務に忠実です」
第4話 鉄槌作戦
ターニャ・フォン・デグレチャ
「(私も彼らを見習わねばならんな、まだ講和の芽が消えたわけでは無し。己の仕事をするだけだ)」
「待たせたな、諸君。本作戦の目的は、敵野戦軍の包囲殲滅。連邦主軍を壊滅させ、その戦争継続能力を奪うことにある。作戦の肝は、敵地後方の大河を巨大な障壁に見立てることだ。これを障壁たらしめるべく、すでに空挺部隊が降下を完了、数か所の橋で封鎖を進めている。そして、先見した降下猟兵を後続で増強。敵の進路と補給を締め上げる。無論、敵も死に物狂いで橋を取り返しに来るぞ。なんとしても降下猟兵を支え、死守せねばならない。よってここからが機動戦の粋と呼べる。機甲戦力を主軸とした鉄槌により、敵戦区をぶち抜き、敵地後方の降下部隊と合流、完全に敵の退路と補給線を断ちきり、敵野戦軍を分割包囲する。その後、包囲した連邦軍を友軍が徹底的に叩きつぶす。連邦首脳がもう二度と戦争をしたくなるほどにな。本作戦における我々の仕事は、突進の戦法。中央打通組だ。遅れれば降下猟兵の諸君が全滅しかねん、責任は重大だぞ」
「安心したまえ、すでに友軍が航空優勢を確保したそうだ」
「諸君らの不安は理解できる。よって、小細工を行うことにした」
「だが、飛行による魔導反応を抑制すれば他の魔導部隊に注目を集めることができる。連邦軍は上空の魔導士ばかりを警戒するゆえ、突破の成功率は各段に上がる。索敵のための視界も良好だ」
「(クソっ、あいからわらず参謀本部は人使いが荒い)」
「万が一の敵増援もある。ここは引き上げるぞ。……陣地を突破し、司令部を見つけたとしてもそれが本当に司令部だとは限らん」
「偽装の公算が濃厚。つまり、罠だ。罠に決まっている、このまま赤犬へ突進する牛になれと?……運よく敵の司令部を見つけたとしても、それは本当に司令部なのだろうか?本当に?……よって、対地襲撃隊列のまま離脱しながらの捜索撃滅に務めよう。離脱しながら」
「(仕事は誠実にこなすべきだが、正当な報酬の範疇でなければ)」
「見つけただと?あのバカ、散々誤認しておきながら、なぜこんな時だけ?!」
「いずれにせよ、講和が成立するまでは戦争かと」
ヴィクトーリヤ・イヴァーノヴナ・セレブリャコーフ
「敵陣地は予想以上に強固。各所で苦戦している模様」
「中佐殿、いまこそ牛になる時ですね」
「全隊へ通達。敵陣地および司令部付近にて行動している部隊はただちに退避せよ。いい急いでー!」
ハンス・フォン・ゼートゥーア
「覚悟はしていただろうが、今の帝国ではありふれた悲劇か」
「なんにせよ、これで終わらせたいものだな」
「方位から全面的脱出されることは阻止しました。現状望める最大限の成果かと」
「勝ったな……」
「友よ、君はやり遂げたのだ。誇りたまえ」
「破綻するでしょうな。最悪、国家機構まで危うい。まことに恐れ多いことを承知で申し上げるなら、帝室の安寧とてでしょう」
「軍人が恐れるべきは、外敵でしかありません。内乱を恐れ、国家の大事を誤るぐらいであれば内乱上等では?」
「たとえ、どれだけの犠牲を払ってでも?」
「(よせ……やめろ……その口をつぐめ!ルーデルドルフ!)」
クルト・フォン・ルーデルドルフ
「かまわん。寝ればどこも同じだ。もう作戦は始まっている、乾坤一擲の大規模反撃戦だ」
「でしたら、反撃部隊の頭を狩るのが1番早いでしょう」
「もったいぶるな、ゼートゥア。この種の仕事にうってつけの猟犬を東部で放し飼いにしておるではないか」
「ああ、また勝った」
「少しは罪滅ぼしになったか」
「率直に言えば、難しいでしょう。……左様、難しいでしょう」
「我々軍人の職務は、外敵から祖国を守ること。そのためにこれまで、あまたの将兵が犠牲を払ってきたのです。さらなる犠牲を払う価値があるか分かりません。しかし、無限の犠牲を前提とした時、いまさらどうして無責任に勝てぬと言えましょうか!」
「よろしい。そこまで勝てと仰るなら、勝ってごらんにいれましょう」
「いかなる犠牲を払ってでも、わが軍は勝利致します!」
ロリヤ
「この様とはな、政治局が手打ちにしたがるのは当然だが、愛しの妖精さんをあきらめろと!」
「帝国は勝利に酔っている?国内の実情も知らず、プロパカンダに踊らされている?まったく、これだから統制されてない衆愚主義は。やはり我々は政治で戦うべきだな、いやはや恋路とは応援されるものですなあ」
第5話 貧乏籤
ターニャ・フォン・デグレチャ
「まあ、どのみちこのまま戦争を続けるなど不可能。合理的判断ができる人間なら誰でも分かることだ。上もそこまでバカではある……へ?」
「(し、島流し?!自派閥のボスがしくじっただと?!)」
「(なんですとお!!講和がダメになった挙句、ボスが不遇枠!最悪際まる)」
「(こんな状況で、まだこき使うと?!)」
「正直に申し上げれば、無謀の一言に尽きるかと。B集団が守るべき戦線は、すでに荒漠すぎ、兵力は過少すぎます。この状況でA集団の攻撃が進めば、守るべき側面が、さらに伸びるのですよ。これでは、B集団は伸びきったゴムです。ハサミどころか、針の一突きで決壊しかねません。さらに言うならば、計画名からしてしゃくに触ります」
「その名が含意するのは、遥か彼方、銀河の星々であります。ロマンは感じますが、遠大すぎる目標かと」
「(どこのどなたかが存知あげないが、お可哀そうなことだ) さらには、敵が囮に食いついたところで仕留める狩人も必要でしょう」
「せ、僭越ながら私のただの中隊ではありません。まして籠城ともなれば、魔導部隊は死活的に重要です。これは手足をもがれるのと同等で!」
「ど、どうしても、私から中隊を取り上げるのですか?!」
「お待ちください。さすがに状況次第では小官の判断で撤退を」
「踏みとどまれ!少しでも時間を稼げ!(まずいな、あまりにも早く市街地に突入される)各隊、状況を!」
「結構、結構。気に入ったぞ、中尉。ただちに死守命令を書類で運ばせる!」
「チッ、悪辣極まりないな。敵歩兵は使い捨ての駒か」
「却下だ、魔導部隊で防ぐ。ヴァイス少佐、敵の砲弾を叩き落せ。……そのための訓練ならば、大隊編成時に経験させてあるはずだ」
「ヴァイス少佐、古参の貴官がそれでは困るな。再教育を望むのかね?」
ヴィクトーリヤ・イヴァーノヴナ・セレブリャコーフ
「第一線陣地、突破されかけています」
マテウス・ヨハン・ヴァイス
「第二、第三中隊。砲弾を落としつつ、敵砲兵を叩く、我に続け!」
「怯むな、貫通術式かまえ!」
ハンス・フォン・ゼートゥーア
「飛ばされるだけとは、拍子抜けだ」
「我々は軍人だ。国家の意に従わざるをえん」
「愚痴の相手もいなくなるな」
「高い酒と葉巻を用意しておいてくれ、破産させてやる」
「将校とは、命令があれば身一つで赴任するものだが、東部での影響力は制約される。実質的に手駒はゼロか。……いや、一つだけあったな」
「参謀本部から島流しされてな、当分よろしく」
「主導権です。主導権なくしては、防衛もクソもありません」
「劣勢側の選択肢ですので、……カウンターを狙いましょう。囮で敵を誘引し、引き込んだところで撃滅」
「はい、敵が食いつくに足る囮が必要です。しかもエサに食いついた魚が針を飲み込みまで耐える根性も必要かと」
「その点については心配いらん。私にも持ち札が1枚はある」
「礼には及ばん。なにしろ貴様にはエサになってもらわねばならんのだ。エサになった挙句、狩人までやれとは、私も求めんよ」
「貴官の発案だ、貴官に実行させるのが当然だろう。連中の首都を焼いた部隊がエサだ。さぞかし敵が釣れるな」
「貴官の魔導中隊を貸せ。それで事足りる」
「なに、一本程度は構うまい」
「元々は連邦の車両整備拠点だ。先の鉄槌作戦で、帝国軍が占拠したものの、戦力が引き抜かれて半ば放置されていた。鉄道沿線に位置し、補給地としては申し分ない。敵が再奪還を目指すには最適な拠点だろう。貴官の戦闘団には敵の鋭砲を歓迎してもらう。友軍によるかんいまで、断固防衛だ」
「許可できない、死守だ」
クルト・フォン・ルーデルドルフ
「貴様の情けない姿は滅多にみれん、こんな機会を逃すものか」
「貧乏籤をひいたな」
「俺は飛ばされぬ。……揃って上へ反対したというのに、不条理極まりない」
「作戦への理解、政治的な折衝、参謀本部のどこを探しても貴様の代わりはおらん」
「東部は任せた、貴様と俺、我、俺で勝つ!」
「武運を祈る。凱旋将軍閣下として戻ってこい」
「我、俺で勝つか。一度の失敗すら帝国の屋台骨を揺るがす。だが連邦は失敗を繰り返しても立ち上がってくる……まったく、不公平だな」
「大目的は、より良い講和条件の獲得。その一環として、敵の継戦意志を砕く。具体案としては、連邦軍の資源地帯の制圧が選定された。本計画では東部軍は主攻担当のA集団、戦線保持を担うB集団に二分する。殴るのがA、守るのが、B軍だ。この作戦の完遂がなれば、わが軍の継戦能力は維持され、敵のは弱まる。講和交渉でも譲歩が期待できるわけだ」
「実質は左遷だがな。最高統帥府は、耳に痛いことを聞きたがらん」
「上が勝てというならば、勝つしかあるまい。なんとしてもだ」
「いい指摘だ。命名者は、無骨に見えて意外と繊細なやつでな」
「防御のために何が必要か」
サー・アイザック・ダスティン・ドレイク
「ハンス・フォン・ゼートゥーア中将。厄介な男だ」
「有能だ、恐ろしくな。もし戦場で目にすることがあれば、……殺せ。なんとしてもだ」
ロリヤ
「なんという不埒な!もしや私は誘惑されているのかなあ?」
「バカを言うな!!我々で生け捕りだ!」
「戦死すればただの英雄ではないか!見せしめ裁判で嬲り倒すのだ!逃がさず、殺さず、なんとしても!」
第6話
ターニャ・フォン・デグレチャ
「まだ撃つな、狙撃術式で確実に仕留める」
「閣下がかくれんぼも出来ぬマヌケのものか。まだ分からんのかね、今度は閣下が囮となるつもりなのだよ」
「敵の意識を一方に集める理由など、背中を蹴とばす仕込み以外に何がある!」
「そのまさかだ。魔導士以外は防衛戦を継続、ヴァイス少佐に指揮を執らせろ、口を動かすくらいはできるだろう」
「二〇三大隊は魔導反応を抑えて進出する。連邦の包囲網をかいくぐって、旧援軍のもとへ向かい、背後から敵の尻をぶちのめすぞ!」
「デコイで釣れたか、これで留守番部隊の負担も減る!」
「対地支援突入用意!後ろから叩くぞ!」
「例の連邦魔導士か、こちらの目的を読んでいたようだな」
「魔導封鎖解除!前時代の勇者どもに現代の長距離射撃を浴びせてやれ!!」
「さてはラーゲリでの絆か」
「(コミーの宝珠技術、それほで卓越していると」
「まずは空間爆破だ。肺を焼き尽くすぞ!……主よ、皆において、かの敵を退けん、世に安寧をもたらしたまえ!」
「手が足りん、貸せ」
「接近戦で防核を破る、その隙に貴様らでケツを蹴り飛ばせ!」
「では一つ、ある手をご覧にいれましょう」
「近接戦だ!!続けえ!!」
「くたばれえ!!」
「対地支援だ、突入用意。総員、閣下を救うぞ、突撃!!」
「殲滅しろ、撃てええ!」
「それは風流な、戦場なのに奇妙なことです」
ハンス・フォン・ゼートゥーア
「ならば、失敗しなければよいだけのこと」
「決心。それこそが指揮官の務めだ。心を使うとすれば、迷うためでなく、決するためであろう(…………これ以上は時間の無駄だな)諸君らが懸念する点は、私も理解する。よって、君たちは君たちの理念で動きたまえ」
「中尉、散歩は好きかね?」
「ソルディム528陣地だ。レルゲン戦闘団が包囲されたのは知っているだろう」
「却下だ。帝国軍は建軍以来、指揮官先頭が大前提だろう。さあ諸君、泥に飛び込もう。ともに戦争を始めようではないか!」
「心配は無用だ。護衛役として、魔導士を借りている」
「敵がいるのは分かるとも、貴官らがなんとかしてくれたまえ」
「敵が飛び出してきたのなら、私が囮となろう。……車を止めてくれまえ」
「ん?即興だが?」
「中尉。デグレチャフ中佐をバケモノ呼ばわりすると聞くがね、私に言わせてもらえば『あれこそ正しい参謀将校の姿だ』」
「ここが正念場だ。私も負けてはおれん!」
「まったく、こんな時ばかりは、若いのが羨ましいなあ」
「泣き言は止めたまえ。この状況で後退すれば全軍が崩壊しかねん。軍旗を掲げろ、私がここにいると誇示するのだ!」
「かまわん、やりたまえ」
「私の命令が聞けんのかね、…………行け」
「高級将官が死ぬ、いいことだ。少しは後ろの連中も目を覚ます。将兵の死体は最大効率を持って活用されなければならない。戦争もここに極まれりだな」
「デグレチャフ中佐、貴官の舞を楽しませてくれ」
「いやはや見事なある手だ。この場が片付いたら、お茶の誘いでもさせてくれ」
「文化こそ、我々と獣、日常と非日常の区切りだと、そう思わぬかね?」
ウィリアム・ダグラス・ドレイク
「高価値目標過ぎる。我が隊だけでも討ちにいかせてもらわねば」
「我が隊は自由裁量権を持つ」
「(馬鹿げた話だ、作戦の議論ですら建前が必要とは)」
「状況が変わった!敵の魔導部隊が離脱したぞ。敵の援軍を叩く前に、相手の陣地を落とせる。返す刀で敵の援軍も仕留めれば完勝だ」
「戦場の変化に合わせて臨機応変に動く。何がまずい!」
「H9、我々は出撃したとおぼしき敵魔導部隊を追撃する!」
リリーヤ・イヴァノヴァ・タネーチカ
「党から最優先です。連合王国軍の援護を。そしてラインの悪魔がいれば撃墜し、なんとしても確保せよ、と」
ミケル
「我々がお付き合いすべきでしょうな」
「同志政治将校。我々は世界の反動である帝国との対決に際し、諸国民との共同戦線を維持しつつ、持って進歩を止めぬことを期待される党の軍隊だ。かかる情勢下において、党より連携を指示された部隊が行動するならば、見殺しにも出来ぬ」
「ラーゲリの風に比べれば、ぬるいことよ」
「終わりだ(…………クソ、性能の限界か)」
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